BtoBの企業では、現金を受け渡すシーンは殆どありません。
信用取引(後払い)です。
社員が立て替えた経費の精算や、前払い目的などで、一定の現金は存在します。
小口現金と呼ばれるものです。
しかし、往々にして小口現金の総額よりも小口現金の管理コストが上回るもの(会社によるとは思いますが)なので、企業側としては「現金レス」を目指しています。
人為ミスで現金過不足が出た時の追求、横領されていないことの確認、などのコストですね。
税務署も目を光らせます。
というわけで信用取引です。
売掛金と未収金、いずれも「後で貰える権利」ですが、意味としては下記の違いがあります。(簿記・会計の本職ではないので、別のソースでもご確認下さい。)
売掛金 | 売上によるもの。本業の製品、商品、サービスなどを提供したことに伴うもの。 |
未収金 | 売上以外によるもの。余った鉄くずを売った、不要になった設備や備品を売った、税金の還付を受ける予定、などなど、種類は凄く多いです。いずれにしても、本業(営業活動)以外のもの。 |
買掛金と未払金も、考え方としては似ています。
買掛金 | 仕入によるもの。製品を作るための原料や部品、販売目的で購入した商品、は少なくとも買掛金です。それ以外は、企業ごとの文化で扱いが変わるものだと思います。 |
未収金 | 買掛金とは扱わなかった購入品によるもの。機械設備や備品、給与賞与、税金など、多岐に亘る。 |
これらの差、公的な機関が用語を定義していないかとネット検索しましたが、私には確認できませんでした。
売掛金と未収金、買掛金と未払金、極端な話、税務上は一本化しても問題なさそうです。
但し、分けておいたほうが情報分析に役立ちます。社内の管理会計としても、外部(投資家、金融機関)が見るにしても。
売上や仕入はP/L(損益計算書)勘定、売掛金や買掛金はB/S(貸借対照表)勘定です。
下記に、私の経験や感覚を羅列します。少しでも疑似体験になれば幸いです。
- 売上が発生すると、相手勘定は売掛金に違いないと思います。未収金の場合も、レアケースとして無くはないかな、と思います。
- 仕入が発生すると、相手勘定は買掛金に違いないと思います。未払金ということは、無いように思います。
- 製商品やサービス「以外」のモノを外部に渡して対価を貰う場合、相手勘定が売掛金では「おかしいんじゃない?」と思います。
- 製造するために直接必要な原材料や商品「以外」で支払いがある場合、相手勘定が買掛金では「おかしいんじゃない?」と思います。
- 出荷に伴う運賃をお客様に負担頂くとして、販売元が立て替えた場合、その運賃は未払金のような気がします。
- 運賃を個別請求するのではなく、製商品の単価設定(売価設定)を運賃込みにしているなら、それは売掛金に纏まることで問題ないと思います。これに伴う運送会社からの請求は、未払金で間違いないと思います。
- 一度は出荷した(売り上げた)製商品が返品・返金要求されたら、それは売掛金のマイナスです。運賃も発生したなら未払金です。
※システム屋さんは、売掛金を引き算する処理を絶対に作ってはいけません。マイナスデータという明細も様々な意味で大事なのです。お客様にも、返品に伴うマイナス処理がなされていることを、明示する必要があります。 - 営業活動で出張した場合、新幹線代や出張日当などで後払いが発生しても、買掛金にはなりません。未払金です。P/L上は、交通費は経費、日当は人件費となり、いずれも最終的には決算書で「販売費、及び一般管理費」に積み上げられていきます。
- R&D部門(技術部門、研究開発部門)の新製品開発活動で、実験用の原材料を購入した場合、買掛金にはなりません。未払金です。P/L上は経費となり、それらは最終的には決算書で、活動目的に応じて「研究開発費(経費)」か「製造原価(売上原価)」に積み上がっていきます。
- 製造活動で間接的に使うもの、例えば梱包材量(段ボールだったり、麻袋だったり、ドラム缶だったり、接着剤だったり)を買ったとき、基本は未払金じゃないかなと思います。でも、その金額を特定の製造ロットに紐づけることが出来るなら、買掛金でもいいんじゃないかな、と思います。
- 台風で倉庫が壊れたり製商品が破損したりして、保険がおりることになった。後で貰える保険金は、未収金です。
では倉庫や製商品の価値に評価損が発生した分はというと、これはどこかにお金を払う訳ではないので、買掛でも未払でもありません。評価損や減耗といった費用項目(P/L)、引当金といった負債項目(B/S)が使われます。 - 社員が外部教育を受けて後払いする場合、未払金です。
ソフトウェア資産やパソコンなどの備品を購入して後払いする場合、未払金です。
簿記・会計はややこしいことに、B/S科目、P/L科目が自由に手を繋いだり、小刻みに転記を繰り返したりします。
取引の事実として売上(収益)か仕入(購買)か、扱いは費用化するのか、資産化するのか、後払いで決済するなら売掛金、買掛金、未収金、未払金のいずれか。
そして、最終的には決算書にどう積み上げられていくか。
暗記してもいまいちイメージを湧かせにくい世界なので、事例をたくさん読んで、理解を徐々に立体化させていくのがお奨めです。
そのうち、財務会計の感覚がつき、管理会計のあるべき姿も見えてきます。
(応用編?実務編?ですが、システム実装上では即日払いでも未払金を経由させることもあります。これは、システム処理やユーザー運用上で都合が良かったり、管理会計上の拾い方で都合が良かったりする為です。)
さて、これら後払いデータをシステム上で考えていきます。
業務データでは常に、5W1Hを押さえる必要があります。会計システムへの計上では特に。
いつ | (When) | 発生日(起算日)、入金予定日、支払い予定日※ |
どこで | (Where) | 入金方法、支払方法※ |
だれが | (Who) | 取引先、収益部課(自社)、負担部課(自社) |
なにを | (What) | お金 |
なぜ | (Why) | 取引内容(へのリンクでも可)、備考 |
どのように | (How) | 入金方法、支払方法※ |
※締日、金種(支払方法)、支払日などの情報は、一度きりのお付き合いで無い限り、個別取引で考えません。「取引条件」としてマスタ管理します。これは長くなるので、また別記事で書きます。
簿記入門の教科書では、売掛金などは単純合算していきます。
が、実際には回収してこそ売上であり、負債の支払いを忘れるなど論外、の世界です。
よって、取引先の特定は必要です。一度きりスポット取引の相手であれば、データ上は「諸口」とし、備考欄に取引先名を入力するなどします。
各取引先にどこまで売掛金・未収金を積み上げてよいかは、相手企業、その企業グループの信用調査を行い、設定することが多いです。
世知辛い話ですが、相手が倒産するリスクもあるので。
これらは「与信管理」と呼ばれるもので、表題の用語と少しずれますので、別記事で改めて書きたいと思います。
反社会勢力や海外ユーザーリスト(北朝鮮のミサイル開発に関与してそうな企業など)への販売は、与信なんて以前に、一切の取引禁止です。