本サイトは新人SE向けではなく、一定の経験を積んだエンジニアを対象に書いていきます。
今後、幅広い実務能力を養いたい人、成長が実感できずに閉塞感を持っている人、あるいは突然、営業系、生産系、物流系といった業務系システムに関与することとなり、何から始めたものかと悩んでいる人などにお奨めです。
ITベンダーの立場でも、社内SEの立場でも、業務系の上流工程に携わる/携わりたい人間であれば共通の内容です。
ただ悲しいことに、知識と経験を蓄え、的確な判断力を養い、成熟した人材になったとしても、業務系のスキル習得だけでは出世が遅いかも知れません。
出世のほうを第一優先とするならば、小さなものを大きく見せる技術、失敗しても価値があったように脚色する技術、評価者を満足させる技術、パワポの表現力など、実務能力とは少し違うところを先に鍛えた方がよいです。
一攫千金を夢見る方にも、不向きです。それは時代の流れに乗って、ゲームなり仮想通貨なり、何かお金の集まるところを先に探した方がよいです。
ここでは、製造業の企業において不変の原理原則を押さえ、システムが社益に貢献できる場面とはどこか、教科書には載っていない実務視点でお話していこうと思います。
出来るだけ精神論や抽象論(正しく理解し、適切に、網羅的に、ケースバイケースで判断し、費用対効果を踏まえて、ビジネスに貢献できていることを確認する、などで終わっちゃう空論)や、短絡的な理想論ではなく、現実的なお話を心掛けていきます。
疑似体験とまでいけるかは自信ありませんが、要素、勘所などを意識していきます。
当然、私の勤務先のノウハウに相当する部分や勤務先の別人が考えた部分は除いて、私自らが終業後に考えた「あるべき姿」、その上で特定企業に依存しない表記とします。
(元々は部内の後進育成のためにと思って考え続けてきましたが、残念ながら、部内に引き継いでくれそうな人材や環境、要求すらもなさそうなので、このような形ででも残したい、と思った次第です。)
キーワードは、下記のようなものです。(目をつむってすぐに思いつく範囲なので、表現を含めて見直していくと思います)
領域
生産計画、購買入荷、生産工程、外注生産、在庫、棚卸、品質管理、受注出荷、物流、品質保証、財務会計、管理会計、請求入金、経費精算、R&D、情報系
(連結決算、貿易、その他出納は、具体的な部分を語れるほどの経験を持ちません)
設計面
業務とシステムの役割分担、外部設計(画面や帳票印刷)とユーザー合意、内部設計、データのライフサイクル
実装面
画面系の実装方式、バッチ処理設計、障害検知、共通モジュールと高い保守性、維持継続可能なマスタ管理、認証、外部システム連携、印刷方式
基盤
負荷見積りと負荷テスト、開発規約・基準、コード設計規約・基準
テスト
連携テスト、システムテスト、総合テスト、運用テスト
展開
操作マニュアル、運用マニュアル、ユーザー説明会、データ移行、業務切替、稼働後のフォロー
心理面
関係者のバックボーン・心情・感情、教育とモチベーション
常に意識
セキュリティと情報共有の両立、全社最適(社内各署の歴史・文化・製品特性、利害関係)、パフォーマンスのケア(DB設計や画面設計で、危険なSQLが必要にならないかを常に考える)
領域については、一つ一つがそれなりに濃いです。最も濃いのは在庫ですね。幅広さでいったら会計ですが、会計はプロがたくさんいるのでSEの立場では比較的実装面に注力できるかと思います。
全てを身に着けるには、10年、20年、あるいは30年とかかるかも知れません。
ただ、10年後の自分、20年後の自分を想像したとき、どんな自分を思い浮かべるでしょうか。
その年月を受け身で漫然と仕事していたとしたら、苦しくても若いころから経験を積み重ねたとしたら。
(偉そうにしているだけで何の実力もないおじさん、どこにでもいますよね)
長い会社員人生、途中で何回も休憩して良いと思います。ただ時折、自己啓発を再開し、ゆっくりとでも確実に前進させてみてはどうでしょうか。
いつかきっと、「広く深い知見」を身に着けることが出来ます。
これは大きな財産です。というのは、システム推進時には『自信を持って最適解を判断』することができ、トラブル時には『特効薬を処方』することが出来るようになるばかりでなく、自ずと戦略的思考が身に付きます。
(「知らない」から悩み、迷う。知らないだけのことを「分からない・難しい」と錯覚して自信を失う。それは悲しいことです。)
最適解を自ら出せる人、そんな人材になってみませんか。
夢物語と感じる人もいるかも知れません。けど、地道にやればたどり着ける未来像です。
例えば東京の路線図、JRと地下鉄、私鉄が複雑に絡んでますよね。
東京に慣れるまでは、一人で地下鉄乗り継いでどこそこに行けと言われたら、不安になる人が多いと思います。
数年たっても、○○線とか△△県よりは分かるけど、逆方面は不安だな、とか。
でも、いつの間にか乗れるようになっちゃいますよね。
慣れです。
人間、全体の6割、7割が理解できれば、残りは想像つくものです。
しかし、全体の3割しか理解していなければ、残りを想像することはおろか、自分が3割にたどり着いたことすら気づかないものです。
路線の例で6割を考えると、電光掲示板に慣れ、上り下りのホームを自然とチェックするようになり、乗り継ぎに10分も歩くような駅があることを知り、路線図に少しずつ慣れ、主要駅や栄え具合、快速や各駅の停車駅など、徐々に覚えてきた段階かと思います。
最初は、「難しいことはいいから、この駅につく乗り方だけ教えて!」と思っていた自分に比べ、自分も成長したものだと思いませんか。
あらゆる仕事で同様だとは思いますが、上流工程SEの仕事も然りです。
多くの領域に触れ、経験していくことによって、未経験の領域についても想像がつき、仮説が立てられるようになります。
以前は聞き流していた周りの話し声、ニュースなどの情報も、自然と自身のスキル体系に組み込まれていくようになります。
(近くで、興味のない趣味の話をされていても何も記憶に残りませんが、自分と同じ趣味の話が聞こえてきたら記憶に残る、これと同じです。)
はじめは、経験はおろか、見たこともない業務について、ただコトバや資料で「やりたこと」だけをユーザーから説明され、全く理解できないという経験をしてきたでしょう。私の場合、気合入れて臨んでも眠気を我慢するのが大変だった、という記憶があります。
ユーザーは、一般用語・常識だと思って気軽に専門用語を使ってきます。これは普通のことであり、多くの場合はあなたが対処するしかありません。
これも路線の例を使うと、電車に乗ったことがない人に、電車の乗り方をコトバで伝えるようなものです。
これがユーザーの発想に近いです。
分からないなら、「もっと業務知ってる人つれてきてよ。」です。
逆に上流工程SEは、まだ影も形もないシステムのことを、システムに不慣れなユーザーに分かりやすく説明し、イメージさせていく必要があります。
理不尽や不公平とは思わず、システム実現の第一人者は自分なのだからと、プロ意識を高めて臨むよう頑張りましょう。
ユーザーと調整していく中で、メッキ人材(表面しか知らないのに理解していると勘違い)や無責任な営業が軽々しく約束してしまうと、デスマーチの種が蒔かれることとなります。
上流工程の合意(アウトプット)は、下流工程の目的(インプット)となります。ナンセンスな内容でも、フェーズが進めば必達な目的(約束したんだから、やってくれなきゃ困るよ!)と扱われて、弱い立場の人にしわ寄せがきます。
では、広く深い知見を備えたあなたが関わっていたらどうでしょうか。
現実的で効果的な代替案を出すことが出来るでしょうし、実装のための手配、指示を出していくことが出来ます。
誤算もあるでしょうが、その時々の最新事実を踏まえ、最適な道筋を出していく事が出来るでしょう。
もし理解ある上司に恵まれれば、活躍の場もどんどん広がっていくかも知れません。
さて、どんどん長くなってしまうので、一旦ここで区切りたいと思います。
これからお話する記事の前提として、下記の通り架空の会社を定義します。(2018年1月31日、初期設定)
業種:製造業
売上:5,000億円
内訳)A事業部2,000億、B事業部1,000億、C事業部1,000億、D事業部500億、E事業部500億
形態:事業部制とし、それぞれの事業部の下に、営業、製造、品質、技術の部門や子会社が存在するものとする
本社管理部門や工場の運営部門は、事業部に属さない
工場:配分未定
業務知識もIT実装も、概ね「大は小を兼ねる」場合が多く、逆は成り立たないので、大企業と設定しています。
大企業は細分化すると中小企業の集まりのような側面があります。大きな会社の小さな部署でも、会社が用意したシステムを使っています。
反面、中小企業の延長で大企業のシステムを考えると行き詰ります。
そういった事情も、書ける範囲で記事にしていきたいと思っています。
興味を持って頂けたら、リンクは歓迎です。連絡も不要です。
自社の人間ではないか、と勘繰ることはご容赦下さい。