業務システムにとって、会計の基礎知識は重要です。
会計を知らなくても一定の仕事は可能ですが、視野の広がりが限定的となってしまい、目的志向を養うにも障害となります。
SEが会計を極める(膨大な用語を暗記したり、グレイゾーンの判断を突き詰めていく)必要はありませんが、会計を重要視はすべきです。
会計の考え方、原理原則、絶対視すべき範囲、内部統制の担保、人為ミスへのケア、などは押さえておきたい。(押さえられるように、育ちたい)
業務システムでは、様々な事業上の事実(売上、仕入、生産、評価替え、経費、等)をインプットとし、業務支援や作業指示を経て、ゴール(決算システムや決算書、債権債務や入出金といった出納)へと繋げていきます。
業務プロセスに「決まった正解」はありませんが、主なゴールである会計・出納には、その大半に「正解」があります。例えば法令、例えば企業会計原則と呼ばれる簿記のルールです。
システム実装だけに強い人と、会計だけに強い人が分業をしても、細部の連携は難しい。やはり、誰かが一気通貫で整合性を見ておかないと、屋台骨レベルのバグが生まれかねません。
屋台骨レベル、本質的な部分で不整合が見つかった場合、大きな手戻りによる対応はまだマシなほうで、私の見聞きした範囲では、ツギハギの処理や、「手段のための手段処理」を追加していく傾向にありました。
保守性も最悪、ユーザーの実用性もダウン、新たなバグ要因、と悪いことだらけですが、PMが「軽微な影響で、プロジェクトを立て直しました」と報告できるメリット?だけがあります。
このような不幸を招かない為には、会計屋さんがシステム実装のありかた(DB設計、計上データ作成)に詳しくなるか、PM/SEが会計知識を備えるかが求められます。
⇒繰り返しになりますが、同一人物が全体を見渡せるスキル
前者がたまたまプロジェクトに参画していればラッキーですが、そのような偶然を望むより、日ごろから自らが後者にならんとしては如何でしょうか。
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一定の会計知識とは
会計は、一つ一つは難しくないのですが、とにかく内容が膨大です。
毎日、会計に従事する仕事ならともかく、システム屋としての関与であれば、身に付けるのに5年、10年といった期間が必要になると思います。
逆にいえば早く着手しないと、業務システムの心臓ともいえる会計を知らないエンジニアとなってしまい、大事な会議などで「断言できない」レベルの人間で終わるかも知れません。
会議中に、業務的な素人の「~だと思うんだけどね」という思いつき発言は、会議の流れを邪魔するだけです。
会計の種類
会計は、大きく財務会計と管理会計とがあります。
財務会計が分かれば管理会計は自ずと見えてくるものですが、管理会計から入っても財務会計を想像することは困難です。不可能ではありませんが、遠回りです。
修飾なしで「会計」といったとき、財務会計を指すことが多いと思います。
会計と出納
会計と切っても切れない関係に、「出納」があります。
会計が金銭価値に影響する事実を記帳するものであるのに対し、出納は取引事実に対して入出金を指します。
一定規模以上の企業では、会計は経理部、出納は財務部が司るかと思います。(実務はさらに別部署のケースも)
出納は、語彙的には会計ではないものの、両方を纏めた方が分かりやすいので、同じに扱っていきたいと思います。
余談
会計を制する者は、~を制する。というコトバや書籍を目にすることがあります。
会計データは、全社の事業活動が俯瞰できる側面があるので、経験もしていない領域まで類推することが出来るかも知れません。
但し、それは経営的・戦略的なお仕事に携わっている方には効果があると思いますが、ことシステム屋には不十分です。(強い武器の1つであることは間違いありませんが)
会計に集まってくるデータは、あくまで結果であり、その過程は除去されています。
企業活動では、そのプロセスに様々なパターンがあり、泥臭さもあります。
業務システムに関与するということは、会計は素より、業務プロセスと向き合い、個々の業務特性・コスト・リスクなどを深掘りしていく必要があります。